2016年01月12日

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イタリアのSF雑誌『Robot』76号(DelosBooks)が刊行されました(pdf版と紙版があり)。この最新の76号には、ダリオ・トナーニ(Dario Tonani)『モンド9』のスピンオフ短編「Karrena」が掲載されています。著者は、作家、翻訳家、編集者、日本文化研究者のマッシモ・スマレ(Massimo Soumare')。この短篇「Karrena」の舞台はもちろん惑星〈モンド9〉。砂上の船〈カレーナ〉と、それに乗船している女性ヤレー。砂漠のど真ん中でタイヤがパンクして動けなくなり、かれこれ一ヶ月もその場にとどまったまま。ボイラーを止め、エネルギーを無駄にしないようにしながら、じっと好機を待っている。そんなある日、ヤレーは遠くに〈四角翼〉の大群を見つけた。別の船が近づいているしるしだ。貨物船か? ついに脱出のチャンスが来た! ヤレーと〈カレーナ〉は戦いの態勢を整える……。戦いが終わり、船の残骸と死体を漁っていると、クレーンに引っかかったのは、まだ生きている少女だった……。

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〈モンド9〉の砂漠の上で船が立ち往生しても、もちろんJAFは呼べない。では、どうする? 他の船が通りかかるのを待って、襲い掛かる! 私たちの世界の倫理観など通用しない別世界、錆と腐敗が支配する世界での生き残り術。金属は錆びていき、肉は腐っていく。ただそれだけの世界。他には何もない。生きるために手段を選んではいられない。悪名高い〈カレーナ〉とその“姉妹”ヤレーの「普通の」一日は、よく考えると(よく考えなくても)グロテスクで酷い状況なのですが、それが詩的に語られていて、美しいとさえ感じてしまいます。〈カレーナ〉が貨物船を襲う様子も、細かく描写され、臨場感たっぷり。船から乗員へのコミュニケーションは、本編『モンド9』の「カルダニカ」にも登場した音楽用シリンダーによる音声通話で行なわれます。『蒼き鋼のアルペジオ』(イタリア語版コミックは、このスマレ氏が翻訳しています)のメンタルモデルみたいな擬人化も大好きなのですが、こういうアナクロで面倒なコミュニケーションも味があります。10ページほどの短編ですが、ぴりりと辛い、印象的な作品です。本編よりもグロ度が増している気も…。扉イラストは、もちろんフランコ・ブランビッラ(Franco Brambilla)。

なおイタリア語のsorellaは英語のsisterと同じく、妹/姉の区別がありません。この作品では〈カレーナ〉とヤレーのどっちが妹で姉なのか、ちょっと気になりました。

著者のスマレ氏は、日本語の作品も書いています。井上雅彦編『ひとにぎりの異形』(光文社文庫、2007年)に収録されたショートショート「鉄と火から」がそれです。興味のある方はぜひ!





ラベル:イタリア SF
posted by こにりょ at 14:56| Comment(0) | イタリア語の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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