2015年07月31日

ダリオ・トナーニインタビュー訳

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『Delos Science Fiction』173号に掲載された〈ダリオ・トナーニインタビュー〉の全訳を掲載します(ダリオにはOKをもらっています)。抄訳にしようと思いましたが、結局全訳してしまいました。このインタビューは、Mondo9の2シリーズの合本版『Cronache di Mondo9』刊行前の特集企画の一つで、『Cronache di Mondo9』に至るまでの経緯や展開について著者が語っています。まずはイントロダクションで、その後にインタビューが始まります。イントロダクションにはMondo9シリーズの出版史が記されていますが、わかりやすくまとめておきます。

2008年 短篇「Caridanica」が『Robot』誌に掲載
2010‐2012年 「Cardanica」「Robredo」「Chatarra」「Afritania」が電子書籍で刊行(40k Books)
2011年 「Cardanica」の英訳版が電子書籍で刊行(40k Books)
2012年 4つの短編をまとめて『Mondo9』が紙の書籍で刊行(Delos Books)
2013‐2014年 Mondo9第2シリーズである中短編「Mechardionica」「Abradabad」「Coriolano」「Bastian」「Miserable」が電子書籍で刊行(Delos Degital)
2015年8月 Mondo9の第1シリーズと第2シリーズ(第1シリーズと同様、5つの中短篇に間奏を加えてまとめたもの)の合本決定版『Cronache di Mondo9』が刊行(Mondadori社の『Urania Millemondi』から)

では、以下インタビューの訳です。太字がインタビュアーの質問。「」のついた発言がダリオ・トナーニの返答です。わかりにくいと思われる部分には訳注をつけておきました(*1〜*9)。

*  *  *


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ダリオ・トナーニ(Dario Tonani)、1959年ミラノ生まれ。イタリア最重要のSF作家の一人。ボッコーニ大学で政治経済学を修め、自動車雑誌の記者として仕事を行なう。SF、ホラー、ノワールに情熱を抱き、80年代に小説を発表し始める。2007年には『Infect@』が『Urania』誌の一冊として刊行(*1)、大成功を収める。続いて『L’algoritmo bianco』と『Toxic@』を、同じく『Urania』誌として刊行。さまざまなジャンル誌(『Giallo Mondadori』『Segretissimo』『Urania Millemondi』『Robot』)やアンソロジー(出版社はBietti、Stampa Alternativa、Addiction、Puntozero、 Delos Booksなど)に80本もの短篇を発表。2011年には短篇集『Infected Files』(Delos Books)が刊行。2008年に『Robot』誌に短篇「Cardanica」が掲載されたが、この作品は後に40k Booksから電子書籍として刊行され、アメリカで英訳版の電子書籍も刊行。さらに3つの中篇が書かれ、シリーズが完成。これら4篇はすべて40k Booksから刊行され、どれも長いあいだベストセラーリストに入っていた。その後この4篇は、短い間奏をいくつか挿入して一冊にまとめられ、『Mondo9』としてDelos Booksから刊行された。またDelos Degital(Delos Books社の電子書籍シリーズ)から、さらに5つの物語(3つの中篇、2つの短篇)が刊行(「Mechardionica」「Abradabad」「Coriolano」「Bastian」「Miserable」)。そしてこの8月、Mondo9全シリーズが、Mondadori社の『Urania Millemondi』誌の一冊として、『Cronache di Mondo9』のタイトルで刊行される。このニュースについて、ダリオ・トナーニにインタビューを行なった。一冊の『Urania Millemondi』がまるごと、一人のイタリア人作家の作品で占められるのは初めてのことだ。さらにはフランコ・ブランビッラ(Franco Brambilla)の描いた表紙についてなど、いろいろな情報が聞けた。

(*1) イタリアのSF雑誌『Urania』誌もその姉妹誌『Urania Millemondi』も、ペーパーバックスタイルの雑誌だが、一般的な文芸雑誌(いろいろな作品、記事、コラム等を掲載)とは少し異なり、基本的には一冊に長編一作品掲載なので(時にはアンソロジーだったり、長編一作品+おまけとして他作家の短篇を収録したりすることもある)、雑誌というより叢書に近いかもしれない。例えば、ここで挙がっている『Infect@』は、『Urania』誌1521号に掲載されていて、他にヴァレリオ・エヴァンジェリスティ(Valerio Evangelisti)の短篇一作と数ページのコラムも同号に掲載されている。



インタビュアー:カルミネ・トレアンニ(Carmine Treanni, 『Delos』誌編集者)

 Mondo9シリーズは、2008年の『Robot』誌54号に掲載された短篇「Cardanica」から始まりました。その後、40K社から「Robredo」「Chatarra」「Afritania」の短篇3作が電子書籍として刊行。さらには、この短篇4作に幕間の物語を加えて一冊にまとめた『Mondo9』が、Delos Books社のOdissea叢書から刊行されました。この『Mondo9』をもってシリーズの出版が終わったわけではありませんが、一旦ここで区切っておきましょう。これらの短篇作品は、紙からデジタルになり、それから再び紙の書籍に戻ったわけですが、そのような展開を取ることになると予想していましたか?

「実はまったく予想してなかった。出版の展開としては異例のことだね。『Cronache di Mondo9』の謝辞にも書いたけれど、出版業界の慣習に逆らっていると言ってもいい。そう言えるのは、“電子書籍から紙の書籍へ”という展開(これはMondo9シリーズの成功の証だと考えたい)のためだけじゃない。書店から路上売店に行き着いたからだ(*2)。つまり、より広い平土間席に足を踏み入れたというわけだ。『Urania Millemondi』誌とその読者のタイプからすれば、私の作品は、外国の著者や作品とすぐに比較されることになるだろうね(*3)。Mondo9はこの雑誌とは「正反対」だから、「9」がひっくり返ってしまわないか心配だ……なんてね、冗談だ、そんなことは絶対にないよ!」

(*2) イタリアでは雑誌は、屋台のように路上に設置される小さな売店で売られている。『Urania』誌や『Urania Millemondi』誌もこうした売店で販売される。つまり、上質なソフトカバーの書籍『Mondo9』は書店で販売されたが、今回『Urania Millemondi』の一冊(安価なペーパーバック)として刊行される『Cronache di Mondo9』は路上売店で販売されることになる。

(*3) 今回『Cronache di Mondo9』が刊行される『Urania Millemondi』誌では、これまでイタリア以外の著者の作品が刊行されてきた。一冊丸ごと一人のイタリア人作家の本になるのは今回が初めてらしい。

 紙の書籍版『Mondo9』の刊行後、Delos Degitalから、5つの新しい物語が出版されました。中篇3つと短篇が2つ。タイトルは「Mechardionica」「Abradabad」「Coriolano」「Bastian」「Miserable」。ここで電子書籍に話を戻せば、最初から9つの物語を書くことを考えていたのですか? それとも書いているうちにシリーズ化していったのですか?

「「Cardanica」執筆当時(この短篇は、2008年に『Robot』誌に持ち込みするまで、6年間引き出しの中で眠っていた)、シリーズ化のことはまったく考えてなかった。40k Booksが電子書籍版の刊行を決めたときに、シリーズ化の話が出たんだ。「Cardanica」は予想をはるかに超えた大成功を収めた。それで、ほとんどお遊びのつもりだったけど、この短篇を評価してくれた読者のために、一種のボーナストラックを書くことにしたんだ。すぐに7枚の原稿を書いて、それを40kの編集長ジュゼッペ・グラニエリ(Giuseppe Granieri)に渡した。彼は大喜びだったよ。「オーケー。でも、これだけじゃ足りないな。最初のと同じくらいの長さのものがあと3篇ほしいな」と言いさえした。彼はすぐに、余裕のある出版計画を立てた。こうして最初のものが2010年8月に、最後のものは2012年2月に刊行された。一方、Mondo9の第2シリーズ(「Mecardionica」)は、まったく違った仕方で誕生した。最初からシリーズ化が宣言されていたし、後で一冊にまとめることになると分かっていたからね。それで第1エピソードを書くときから、きちんとした構成を作り、他のエピソードがつながるようにしたんだ。各短中篇を、それぞれが独立しすぎないように、一篇だけで完結してしまわないように書いた。最後のエピソードで最終的にまとまるようにしたわけだ。第1シリーズに付け加える物語を4つにするか5つにするか、編集者シルヴィオ・ソシオ(Silvio Sosio)と長いあいだ話をした。でも、絶対に全部で9つにするべきだと私は確信していた」

 差し迫った出来事についての話題に移りましょう。一冊まるごとMondo9の『Urania Millemondi』誌が、「Cronache di Mondo9」のタイトルで、8月に刊行されます。これは、既刊の2つのシリーズに未刊行の間奏をつけて、一冊の物語にまとめたものです。イタリアの作家が単独で『Milemondi』に登場したのは初めてのことです。喜ばしいことですが、大きな責任も伴いますね。そう思いませんか?

「『Cronache di Mondo9』の刊行は、職業作家としても私人としても一つの大きな節目だ。名誉なことだし、とても誇らしく思うよ。正直に言えば、これほど高く評価してもらえるとは思ってなかったし、これはその証以上のものだ。責任? 確かにそうだね。完全に自覚してるよ。イタリアのSF界――特に『Urania』誌やその姉妹誌の読者――は、いつも自国の作家に対して厳しい目を向けている。だからMondadori社の選択は、勇気のあるものだと思う。でも率直に言えば、私には自信があるよ」

 Mondo9のアイデアはどのように生まれたのですか? 例えば、惑星上の砂漠という舞台、機械工学がそこで発展した唯一の科学であるという設定など…

「最初のアイデアは非常にシンプルかつ奇妙なものだった。最初に書こうと思っていたのは……そう、地上を舞台にしたスペースオペラで、登場する宇宙船は、奇妙な推進システムを備えたものではなく、車輪のついたものを考えていた。私は、このとても愛されてきたSFサブジャンルに典型的な要素を一式備えたものを書こうと考えていた。例えば、大筋でしか行き先の分からない旅、小さなコミュニティと旅人たちとの関わり、もちろんこれまで通ったことのないルート上で起こる予想外の事件も。こうした要素すべてを使って、本当に周りには真空の宇宙があるかのように描こうと考えていたんだ。でも、宇宙やその果てしない広がりを“模倣”できるものに何があるだろうか? それは砂漠だ! 実は、はじめMondo9の船は木製にしようと考えていたんだ。模倣しようとしていたタイプの物語のものよりも、ずっとバランスの悪い奇抜な設定だね。その後、金属製にすることにした(その選択でよかったと思うよ)。でも、私の考えた金属は、古くて錆びたものだ。その上、生きている!」

 全シリーズの最も独創的で興味深い“登場人物”は、惑星Mondo9の砂上を走る車輪付きの巨大な船ですね。ロブレド、アフリタニア、バスティアン、それから空飛ぶ船ミゼラブルも……(*4)。これらは錆びた金属でできていますが、感覚を備えた存在でもあります。そう思いませんか?

(*4) 〈バスティアン〉、〈ミゼラブル〉は第2シリーズに登場。

「Mondo9の船は、生物学的な生命の一形式だ。一種の動物かな? ほとんどそう言える。獣、花、貝、キノコ、機械にまで生命の概念を拡大するならね。どの船も知性を持っているけれど、憎しみ、嫉妬、恐怖は持たない。空腹にもなり、生理学的欲求を備えている。夢を見ることができ、乗員や自分と同種の存在とコミュニケーションを取ることができる。病気になり、死ぬことさえある」

 私はジャンル分けをするのはあまり好きではありませんが、読む本を選ぶ際に、しばしばジャンルが選択の助けになることは認めなければなりません。『Mondo9』について言えば、まさに「スチームパンク」と言えるでしょう。しかし個人的には、それよりも「ニュー・ウィアード」のラベルを、あなたの創造した物語世界に貼りたいと思っています。『Mondo9』を読むと、チャイナ・ミエヴィル『ペルディード・ストリート・ステーション』を思い出します。これは『Mondo9』とはまったく異なった小説ですが、それでもどことなく似たものが感じられます。これについてどう考えますか? ご自分のシリーズをどう定義しますか?

「『Mondo9』に「スチームパンク」のラベルがよく似合うことは、議論の余地はないだろう。全体的には、蒸気と錆の支配する美学が、ページのあいだに息づいているからね。「ニュー・ウィアード」の方が適切かもしれない? そうだね、そうかもしれない。でもジュゼッぺ・リッピが与えた定義も私のお気に入りだ。リッピは「プラネタリー・ロマンス」と定義してくれた。これは、ジャック・ヴァンス、フランク・ハーバート、ロバート・シルヴァーバーグ、フィリップ・ホセ・ファーマーのような偉大な作家たちの華麗な舞台にぴったりな用語だ。私も大好きな作家であるチャイナ・ミエヴィルの作品に私を結び付けようとする人は、あなた以外にもいるよ。私はそれをほめ言葉として受け取っている」

 Mondo9の成功は、イタリアの国境も越えていきました。シリーズの最初の短篇はアメリカで刊行されました。またDelos Booksから出た最初の書籍は日本で翻訳出版され、2014年の日本における海外SFベスト10にも入り、スチームパンクのガイド本ではこのジャンルの代表作品40作の中に取り上げられました。Mondo9が私たちの文化から遠く離れている読者も魅了することになるとは、あなたは予想していなかったと思います。何が日本の読者の心を捉えたのだと思いますか?

「日本での『Mondo9』の成功には私も驚いたよ。私は日本の市場について充分な知識を持ち合わせてはいないけれど、それでも成功の理由を探してみた。そうして、私の物語世界のヴィジュアル性が、例えばアニメ、漫画、コスプレなどに見られるような、イマジネーションの形式(特に、幻想的なイマジネーション)すべてに対して日本の読者が持っている優れた感受性と共鳴したのだと結論づけた。でも、日本での『Mondo9』を取り巻くたくさんの“熱気”と愛情について、最も深い動機だと考えられるものを私に示してくれたのは、日本語版『Mondo9』の翻訳者だった。「君の物語には、私たちの文化や伝統に非常に近い神秘的でスピリチュアルな何かがあるよ」と彼は言った。この言葉が、あなたや私の問いに答えているだけじゃなく、この上もない喜びを私にもたらしてくれたことは言うまでもないだろうね」

 あなたの独創的な物語世界は、ポール・ディ・フィリポやグラハム・エドワーズも評価しています。イタリアでは、フランコ・フォルテ(Franco Forte)、アラン・D・アルティエリ(Alan D. Altieri)、シルヴィオ・ソシオ(Silvio Sosio)なども……(*5)

「Mondo9シリーズは、外国でも多くの著名人の支持を集めていることは事実だ。ポール・ディ・フィリポは、「Cardanica」のアメリカ版の編集者でもあり、グラハム・エドワーズは優れたファンタジー作家。ブルース・スターリングも評価してくれていて、SF界に大きな影響のある彼の推薦文が、『Cronache di Mondo9』の裏表紙で目立っているよ(*6)。そうした評価に少しでも応えられていればいいけれど……。彼らには、大変感謝している。もしMondo9がインターナショナルなオーラをまとっているなら、外国の偉大な作家たちや、外国の市場や作家と日々仕事をしている国内の人たち、そうした人たち全員のおかげだ」

(*5) Franco Forte、Alan D. Altieriはイタリアの作家。Silvio Sosioは編集者。
(*6) 「残酷で幻惑的な未来を舞台にしたトナーニの小説は本当にすばらしい。このような新しい声の誕生を目の当たりにできるのは喜ばしいことだ」

 賛同していただけるでしょうが、Mondo9の成功にはフランコ・ブランビッラの貢献も大きなものがあると思います。電子書籍や紙の書籍の表紙を描きましたし、今回の『Urania Millemondi』誌についてもそうですね。

「フランコはそれをよく分かっているし、私は彼のおかげだと何度でも繰り返すつもりだよ。彼のイメージ画がなかったら、Mondo9は、どこにでもありそうな、暗い物語になっていただろうね。少しごちゃごちゃしたあいまいな言い方になるかもしれないけれど、光も熱もなくて、言葉の向こう側にある本当のMondo9を、読者がページのあいだから垣間見ることのできる舷窓もなかったはずだ。メカラット(*7)には、きっと彼の銅像が立ってるよ。錆で覆われた古びた金属でできていて、台座にはこう書かれている。「フランク・B 画家、建築家、司令官であり、他の者たちが想像するしかなかったものを実際にその目で見た最初の者」と」

(*7) Mondo9シリーズに登場する都市

 『Cronache di Mondo9』刊行に関する情報では、フランコの他の絵も物語に添えられているそうですね。これも『Urania Millemondi』誌にとって初めての試みでしょう……

「そのせいで、この本はますます異例なものなってるね。コレクターならこれを見逃す手はないよ。掲載されているのは9隻の船のラフスケッチで、本のあちこちに散らばっている。なぜ9隻かと言うと、Mondo9の2つのシリーズに登場する船が9隻だから。これらの船が全部動けるわけではないし、全部が独自の機能と形式を備えているわけではないけれどね。間違っていたら訂正するけど、これまで『Urania Millemondi』誌に挿絵が入っていたことはなかったと思う。実は『Cronache di Mondo9』に挿絵を入れてくれるとは思っていなかった。でも、ジュゼッペ・リッピ、フランコ・ブランビッラ、私の三人が、編集者フランコ・フォルテに(少しおずおずと)この提案をしてみると、すぐにOKしてくれた。おまけに、私たちが考えていたような2つ3つの挿絵だけではなく、9つすべての絵を入れようと言ってくれたんだ」

 Mondo9からさまざまなスピンオフが生まれました。例えば、描かれた絵をすべて掲載したあなたとフランコ・ブランビッラの本や(*8)、この作品世界に取り組んだ作家たちの82の物語を収録した『Tutti i mondi di Mondo9』(Delos Books)。また、ファビオ・ロディ(Fabio Rodi)と作家/スチーマーのアウグスト・チャーリー(Augusto Chiarle)によって結成されたThe Wimshurst’s Machineの9曲収録のサウンドトラック(*9)。さらには、漫画作品もほとんど完成間近だそうですね。こうしたプロジェクトがどのように誕生したのか、お話していただけますか?

(*8) イラスト集『The Art of Mondo9』
(*9) The Wimshurst’s Machineによるイメージアルバム『Dario Tonani’s Mondo9: Tribute Sound Track EP』。Augusto ChiarleはスチームパンクSF小説『Le Ombre di Marte』シリーズを書いている。

「正確に言えば、2つのグラフィックノベルは発行元を探している段階だ。一つは、マッシモ・ダッロリオ(Massimo Dall’Oglio)のもので(正真正銘の漫画作品)、もう一つはディエゴ・カパーニ(Diego Capani)のもの。ディエゴ・カパーニは画家で、コンピューターを使ってブランビッラのイラストを動かしたブックトレイラーも作成した。Mondo9はマルチタスク、マルチプラットフォームなんだ。実は元からそういうものだった。とはいえ最初は紙とデジタルのあいだで踊っているだけだった。それからイラストが描かれ、優れた作者たちがスピンオフを書き、さらにはThe Wimshurst’s Machineのサントラ音楽(CDとMp3が購入可能)。最新情報によれば、このサントラの冒頭の曲「Mondo9(Main Titles)」は、Hollywood Music in Media Awards 2015のベスト・アンビエント賞にノミネートされた。こうしたプロジェクトがどのように誕生したか? 最も自然な取り組み方、つまり一つのテキストを評価する読者としてのアプローチについて言えば、共感をもってテキストを受け取り、自分の才能をそのテキスト(私にとって、テキストは開かれた作業場だ)に付け加えるということだね。こうして“コンセプト・アーティスト”フランコ・ブランビッラとのコラボレーションが始まった。音楽もだいたい同じような仕方で生まれた。そして、プロフェッショナルな才能のおかげで、ファンアートのレベルをはっきりと越えるものが生み出されることになったんだ。こうした試みがまだ続いていけばいいね……」

 最後の質問ですが、Mondo9シリーズの出版展開は今後もまだ続いていくのですか?

「私を知っている人は分かっているけれど、私は自分の今後の仕事について進んで話そうとはしない性格なんだ。でも『Cronache di Mondo9』の序文でジュゼッペ・リッピが少しほのめかしているし、本の最後に掲載されている私のインタビューでも繰り返されてるから、ここで隠しても仕方ないね。実は数週間前に、ある物語の最初の草稿を書き終えた。それはMondo9を舞台とした長い物語で、正真正銘の長編作品だ。これまでのシリーズに登場した人物の何人かが再登場するよ。仮のタイトルは「Syraqq」で、この夏に編集作業に取り組みことができて、9月末頃に刊行準備が整えばいいけれど。まあ、まだ分からない。Mondo9の始まりや自然環境についてもっと知りたい読者にとっては、おそらく待ち望んでいたものになるだろうね。でもまだここでは秘密だ。それから日本でも何か展開があるかもしれないね……。まあとにかく、この特集とインタビューに感謝するよ。では売店でお目にかかりましょう!」



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2015年07月28日

delos173

イタリアのDelosBooks社が発行するSF情報誌『Delos』173号で、8月にイタリアで刊行される『Cronache di Mondo9』の特集が組まれています(『Delos』はWeb版は無料、Pdf版は会員のみ無料、紙版は有料)。著者ダリオ・トナーニ(Dario Tonani)と、Mondo9の世界を描いてきたイラストレーター、フランコ・ブランビッラ(Franco Brambilla)のインタビュー、編集者ジュゼッペ・リッピ(Giuseppe Lippi)によるCronache di Mondo序文が読めます(イタリア語)。http://www.fantascienza.com/delos/173

トナーニ・インタビューでは、Mondo9シリーズの出版経緯やアイデアの発端、いろいろなスピンオフ作品、さらにはMondo9シリーズの今後の展開(新しい長編作品も!)について語っています。できればそのうちにインタビューを日本語化して(長いのでたぶん抄訳で)紹介したいと思っています。


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2015年07月24日

urania

イタリアの月刊SF叢書Uraniaが、外国向けの定期購読サービスを止めた模様。いつもなら今頃は購読継続のお知らせが郵送されてくるのだけれど今年は音沙汰がなく、サイトの購読可能リストからもUraniaと姉妹シリーズUrania Correzioneが消えている。まあ電子書籍版がネット書店で買えるので一応は問題ないのだけれど、ずっと紙版を買っていたのでなんだか悲しい。

Uraniaには他にもいくつか姉妹シリーズがあって、その一つ、季刊のUrania Millemondiから、Dario Tonani『Mondo9』とその新シリーズの合本完全版『Cronache di Mondo9』が8月に発行されます。Millemondiでイタリアの作家が刊行されるのははじめてだそうです(いつもは英米の作家)。ブックトレイラーもアップされています。楽しみです。





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2015年07月16日

La ragazza dei miei sogni



『La ragazza dei miei sogni(ぼくの夢の女)』(Gargoyle books, 2007年)

イタリアの幻想小説家フランチェスコ・ディミトリ(Francesco Dimitri)の長篇第一作。ニ作目『Pan(パン)』や三作目『Alice nel paese della vaporità(蒸気の国のアリス)』については、別の場所で紹介文を書いたことがあるのでそちらを参照のこと↓
『Pan』http://www.c-light.co.jp/modules/column/index.php/kubo_40/kubo_40_15.html
『Alice』http://www.c-light.co.jp/modules/column/index.php/kubo_40/kubo_40_05.html

現代のローマ。内向的な「ぼく」は大学の助手で、つまらない日々を送っている。女友達のマルゲリータに恋をしているが、もう何年も気持ちを打ち明けられないままだ。彼女が自分の恋人になった空想に浸って悦にいることしかできない。そんな「ぼく」の夢の中に、いつしか不思議な女性が現われるようになった。明らかにマルゲリータではなく、別の知らない女性だった。その女性に犯される夢まで見るようになる。「ぼく」はベッドの上で動けないままに犯される。恐怖と喜びの入り混じる感情。これは本当に夢なのか?

夢の中だけではなく、昼間も時折その女性を目にするようになる。彼女は現実に存在するのか? 白昼夢なのか? 妄想なのか? 気が狂ったんじゃないかと不安に思う「ぼく」は、高校時代の旧友であるパンクロッカーで“魔術師”のダゴンに相談する。そしてルームメイトにマルゲリータを横取りされた夜、「ぼく」は夢の中の女性ソフィアと実際に出会った。彼女は本当にいた。ブロンドでゴスファッション、自由で何ものにも縛られないエキセントリックなソフィアと「ぼく」はすぐに恋人どうしになる。だが、なぜかダゴンはソフィアをよく思わず、「あの女とは別れた方がいい」と忠告してくるが、「ぼく」は聴く耳を持たない。そして「ぼく」の周りで奇怪な事件が起こり始める。

200ページほどの短めの長編。アーバン・ゴシックホラー。愛と魔術の物語。タイトルと、表紙に使われた画家フュースリーの絵から、ソフィアの正体はたやすく予想がつくだろう。太古から世界に潜んでいる異形のものたちの存在と、人の“魔力”がそうした得体の知れないものに形を与え、肉化させるというモチーフは、『Pan』や『Alice nel paese della vaporità』とも共通する。というよりこれがプロトタイプ。そして『Pan』にも登場したパンク魔術師ダゴンが(『Alice nel paese della vaporità』では名前だけ登場)、キーパーソンとして登場。主人公以上の圧倒的な存在感を示している。その名から分かるように、もちろんラブクラフトのオマージュ。パンクバンド“Thelema Abbey”(バンド名は魔術師アレイスター・クロウリーがシチリアに開設した僧院から)を率いて、「おまえは星だ!すべての男と女が!」とクロウリーにインスパイアされた歌詞の歌を歌い、主人公を魔術の秘儀でサポートする。使用する秘儀もクロウリー魔術である。

なお映画化が進行中で、2015年に完成予定らしい。これは楽しみ。

ラベル:イタリア 幻想
posted by こにりょ at 10:21| Comment(0) | イタリア語の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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