2014年07月25日

『Livid』(『Livido』英訳版)

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以前このブログでも取り上げたことがありますが、イタリアのSF作家Francesco Verso(フランチェスコ・ヴェルソ)の長篇『Livido』がついに英訳され、オーストラリアのSF専門出版社から電子書籍として出版されました(英語版タイトルは『Livid』)。21世紀イタリアの現代SFの長篇作品が英語に訳されるのは初めてかもしれません。

あらすじはこんな感じです(著者サイトを抄訳)。
http://www.francescoverso.com/romanzi-fantascienza-avventura/livido/

【テーマ】:架空の都市、メガロポリスは、地上すべてを脅かすキップル(ゴミ)によって包囲されている。人口の大部分は「リサイクル」や廃棄物の「再利用」、交換価値のある余剰物の探索で生計を立てている。一方、少数の者たちは、自分の記憶をバックアップし、人格を人工身体にアップロードしている。その者たちは〈ネクスマーノ〉(女性の場合はネクスマーナ)と呼ばれ、人類の次なる進化を示している。

【ストーリー】:ピーター・ペインズは〈トラッシュフォーマー〉の少年であり、“キップル”、つまり都市地区全体を埋め尽くす廃棄物の山の中から価値のあるものを見つけて生計を立てている。幼少期の事故のせいで身体に障害があるが、それは彼の夢の妨げにはならない。彼の夢、それはアルバだ。アルバは、ピーターの住む〈コッレ・ヴァスト〉地区の旅行代理店で働く美しい女性である。ピーターは遠くから双眼鏡でアルバを覗きながら、夢を見るだけで満足していた。だが、アルバはピーターと同じ人間ではなかった。彼女はネクスマーナだったのだ。つまり、精神は情報記録メディアにロードされ、完全に人工の身体を持つ存在だった。ピーター・ペインズの人生は、あの日、ネクスマーノ/ナを憎む兄のチャーリー率いる不良集団がアルバを襲い、アルバをばらばらに解体したときから変わってしまった。それ以来、ピーター・ペインズが生きる目的は、二つしかなかった。一つは、愛するアルバのパーツをすべて取り戻し、アルバを再構成すること。そしてもう一つは、復讐だ。


……と、こんな話です。人格を外部メモリにバックアップして、人工身体にダウンロードするというモチーフは、サイバーパンクでおなじみのもので、目新しいわけではありません。しかし、本書における著者の持ち味はそこにはなく、その設定から導かれる哲学的思索と純粋な愛の探求、そして圧倒的なまでの肉体の感覚にあると思います。主人公が片手片足を失っている(義手・義足をつけている)のを始めとして、随所に身体の欠損や破壊の描写が登場し、汚物、排泄物、ネクロフィリアなど、ページから悪臭や腐臭が漂ってくるような感覚を覚える数々の強烈なシーンは実に印象的です。

「キップル」という用語や、そのキップルに覆いつくされた世界(ところどころにゴミ置き場があるというのではなく、大地を覆うゴミの海のところどころに人間の居住区があるという感じ)や「ネクスマーノ」(著者によれば、ネクサス6型から取ったそう)という用語、コピーとオリジナルの問題等、P・K・ディックの影響は明白ですが、読んでいて、どことなくバージェスの『時計じかけのオレンジ』も思い浮かびました(たぶん不良グループ〈デッド・ボーンズ〉がむちゃくちゃやるところとか)。

ともあれ、現代イタリアSFの代表作の一つですので、ぜひぜひ読んでみてください。amazon(Kindle用)で買えます。

英語版の出版社のサイト http://fantasticascifi.com/
著者のサイト(の英語ページ) http://www.francescoverso.com/en
以前私の書いた紹介文 http://www.c-light.co.jp/modules/column/index.php/kubo_40/kubo_40_18.html





ラベル: イタリア SF
posted by こにりょ at 01:08| Comment(0) | イタリアのSF関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月05日

Alia Evo

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電子書籍の幻想小説アンソロジー『Alia Evo: Antologia di narrativa fantastica internazionale』が発売されました。イタリア作家を中心に多数の幻想小説が収録されています。

この『Alia Evo』は、かつて刊行されていた『Alia』の後続誌にあたります(というより復活・進化したのが『Alia Evo』か)。

alia_c.JPG

上記の画像はうちにある『Alia』各号です。私はイタリアものが載っている号しか買ってなかったのですが、『Alia』ではイタリアの作品のみならず、日本のSFや幻想小説が積極的に取り上げられていました。1〜3号まではイタリア‐日本‐英米の3部構成、さらに4号以降はそれぞれ地域別に「italia」「giapponese」「anglosfere」の3分冊スタイルで刊行されていました。残念ながら2011年の『Aria storie』(この号は地域別の分冊ではなく1冊のみ。シンガポールの作品も4本掲載)をもって休刊となりました。

今回、この『Alia』が、電子書籍『Alia Evo』として復活したわけです。ちなみに『Alia』の監修者の一人であり日本作品の翻訳者でもあるMassimo Soumaré氏は、今回の『Alia Evo』でも短篇を書いています(「La Clinica dell’arcobaleno」)。また日本からは、神野オキナ氏が「La residenza sicura Mikasa!」で参加しています。

復活したAlia、今回は長く続いてほしいものです。日本のAmazonでも買えますので、Kindleをお持ちの方はぜひぜひ!

Alia Evoのサイト: http://aliaevolution.wordpress.com/
Aliaのサイト: http://www.arpnet.it/cs/alia/alia.htm




ラベル:イタリア SF
posted by こにりょ at 01:23| Comment(3) | イタリア語の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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